PTSD
PTSD
Post Traumatic Stress Disorder。
心的外傷後ストレス障害。
恐怖を主とした克服し得ない感情や心的負荷により、状況が移り変わっても、そのときを想起させるきっかけによりストレス障害を引き起こす疾患のことを指します。
そもそも恐怖とは生物の持つ根源的な感情の一つであり、生存するために不可欠な反応を引き出すトリガーでもあります。
それは緊急状態で起きる「呼吸を伴わない緊張」であり、不安の増大が行き着いた結果の場合もあります。
これは時として混乱をもたらしますが、同時に自分の身を守るための緊急回避行動を意識より先に起こしてくれます。
つまり「絶対必要であり、なくなれば簡単に人生が終わる」ものなのです。
この恐怖という感情によって内分泌系をはじめとした制御システムが一斉に緊張状態を作り、維持しはじめます。
心拍数が上がり、筋肉への血流が増え、逆に消化器系をはじめとした副交感神経支配の強い臓器では血流が抑制されます。
交感神経系の緊張は高いエネルギー代謝を促し、肝臓をはじめとした代謝系も、平時のようにのんびりとした解毒などを行わなくなります。
その神経系においてもアドレナリンをはじめとした強い伝達作用を持つペプチドは、脳や中枢神経系に強いダメージを残す可能性があります。
副腎の反応は最も早いもので、これらの緊張状態を作り出すきっかけともなります。
血糖値も上がりはじめ、エネルギー代謝の上昇が活性酸素を増やします。
要するに戦闘態勢に入るわけですが、この「生きるか死ぬか」状態あるいはそれに準じた生理活性というのは、長期にわたると確実に体をむしばみます。
短時間であれば処理酵素が素早く体の後始末を始めますが、ある時間、あるいはあるレベルを過ぎた興奮状態は復帰が困難になるケースがあるのです。
PTSDの場合、恐怖とともに「いきすぎた興奮」状態が惹起され、その結果体はその処理がおぼつかない事態というものが発生します。
血圧は平時の2倍にもなり、呼吸のテンポもまるで短距離を走ったあとのように速くなります。
逆に血圧が急激に下がりショック症状を起こしたり、交感神経系は緊張の限界を超えて機能停止に陥ることもあります。
体のコントロールが全くきかなくなる場合もあり、きわめて扱いの難しい疾患の一つだろうと私は考えます。
治良においてのPTSDへのアプローチは以下の通りとなります。
ストレスによる痕跡というのは本人が意識できなくとも必ず存在します。
その痕跡を筋力検査、あるいは触診による可動性チェックで追いかけます。
痕跡を強調するか、あるいはただ触れていると徐々に全身レベルで緊張が強まってきます。
ケースバイケースですが、そのまま観察していると時間差で緊張が解けてきます。
これがきっかけになります。
あとは一つ一つ反応してくる問題を処置することに注力します。
また、ストレス反応のきっかけとなった恐怖を思い出すとき、必要以上の緊張を伴わなければ、向き合いやすくなるものなのです。
治良はその点でもセルフマネージメントの一助となります。
簡単にすべてが解決するものではありませんが、それをするかどうかは自分で決めるしかありません。
向き合う決断をした人にとって、治良はきっと有効な武器になるはずです。