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糖質制限2

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糖質制限2

糖質制限の稿においていろいろ書いてみましたが、あれからあちこちのサイトや文献を読んでみました。

まあすごいことになっております。
何がかというとお互いにすごい誹謗中傷合戦だからです。
擁護派は「糖尿病がなくなれば困る医者や製薬会社があるから、これを広めないような陰謀があるんだろ?」となり、反対派は「バカが!ケトン体大量に作ってどーする?」といった具合です。

私も専門家ではないので読みかじりの印象でしかないのですが、何か昔感じたような違和感がつきまといます。
それはマクロビオティックを研究実践していた頃、玄米食が拡がらない理由を「陰謀だ」と切り捨てていた話を結構きいていたからです。

私はマクロビオティックの実効性は認めておりますが、当たり前のように万能ではなく、もちろん万全でもないということにも気がついておりました。

また、その継続がとても難しく、それらが原因で離脱してゆく人間を、まるで変節脱落してゆくだめ人間かのようにいう人たちにも、そしてそれをきちんと批判できない自分にもうんざりしていました。

そして糖質制限の熱烈な支持者(の多分ごく一部の人たちなのでしょうが)は、炭水化物摂取は人間以下の生き物がすることだ!と主張する人もいるようです。

本当に良いアプローチだと思われるのですが、それゆえこのようなやりとりは嘆かわしいことだとも思います。

さて、糖質制限に関して私なりにまとめ、考えてみました。

まずその良い点として

・血糖上昇がきわめて緩やかで、膵臓のランゲルハンス島が急いでインスリンを分泌しなくても良い。それ故に再機能化させることができる

・高血糖状態による糖毒性の防止

インスリン抵抗性を作り出している内臓脂肪の軽減

があげられるでしょう。

まず高血糖が引き起こす問題について考えてみます。

そもそも高血糖とはどのような状態なのか。
インスリンというのは数あるホルモン、システムの中で唯一血糖値を下げる働きをします。
血糖値を下げるというのは、肝臓によって単純な糖類に分解されたものが血液中に出てくることによって、それらを細胞中に取り込むことから起きます。
インスリンは細胞が糖を取り込むための鍵にたとえられる物質なのです。

取り込まれた糖分はミトコンドリア(細胞内の小胞)上で解糖系を経てクエン酸回路電子伝達系によってエネルギーを作り出します。

また利用しきれない糖はクエン酸回路から離脱し、細胞質上で起きる脂肪変換反応によって“貯金”されます。

このようなエネルギーの元である糖が取り込まれず、血中にダダ漏れしている状態を「高血糖」と呼びます。

高血糖だとなぜ困るのか。

まず単純に糖を取り込めていない状態なので、エネルギーを作ることができません。
血管内はたくさんガソリンがあっても、組織がそれを受け取れないのでエネルギー不足に陥ります。
それでは困るので脂肪や果てはタンパク質まで分解してエネルギーを作り出そうとします。

糖に比べるとこれらの処理は若干手間がかかり、同時にその代謝物の中にいろいろ困った性質のものが出てきやすいという問題があります。

とくにケトン体という代謝物はたくさん作られ、これが血液の性質を酸性に傾ける結果となります。
PHというのは水素分子の濃度と同義で、これらが多くても少なくても細胞内外のイオンの動きに影響を与えます。
通常血液のPHは7.4と若干のアルカリ性に保たれており、これが7を下回るようだと大事になります。

また以前にも書いたように血中にある酵素が不安定な糖に影響を受け、抗酸化作用の効率に問題を生じやすくなります。

血中のタンパク質は、グルコースの持つアルデヒド基というラジカルと結びつきやすく、これは「糖化」と呼ばれる反応を呼び、血管が徐々に好ましくない状態に追いやられやすくなります。

甚だしい状態になると、糖類そのものが体に強い毒性を示すこともあり、これを糖毒性といいます。

これが長期間続くと代謝システムとくに肝機能が影響を受け、結果的に脂質代謝ひいては血管系の反応に問題が出てきます。
そして腎臓や神経系といった代謝の要やエネルギー代謝に敏感な組織がその負担を負うことになります。

というわけでこれらの弊害の元である高血糖状態を防ごうというのが糖質制限の目的であります。

血糖は食後急上昇しやすく、食後30~90分程度でピークになります。
正常であればその後緩やかに収まりますが、インスリンの分泌がはかばかしくないと、いつまでも高いレベルで血糖が維持されます。

厳密な意味で完全に糖質をカットするのは難しいので、きわめて低いレベルの押さえることで意図的にインスリンの必要がない状態を作るわけです。

これによって高血糖によるリスク、そしてその後に起きる好ましくない状態を防止することができます。
エネルギーの元になる反応そのものが少ないのですから、脂肪が作られる反応も少なくなるはずです。

これは内臓脂肪過多によるインスリン抵抗性も軽減させますし、分泌過多によって疲弊したβ細胞も休ませることができます。

短期間であればかなり効果的であると私も思います。

しかし長期的にはどうなのでしょうか。

欧米でいくつかの大規模試験が行われたようですが、すべてがこれに否定的な見解を出しています。
「糖質を制限されると困る勢力の陰謀」なのかもしれませんが、真摯な医学者、科学者も少なからずいるはずで、一考に値する結果であると思われます。

まず先に書いたように糖に変わるエネルギー、順番に内臓脂肪、皮下脂肪、タンパク質の順で分解を行い、エネルギーを作ろうとします。

その際、ケトン体という血液酸塩基平衡に強い影響を及ぼす物質ができやすくなります。

これは腎機能に余裕のない方にとってはゆゆしき問題で、不用意に実践すべきではないという根拠にもなっています。

また今まで糖に頼っていたエネルギー代謝反応が、これらの非常用に切り替わる結果、体がなれるまでだるさを伴う違和感がつきまとうようになります。

糖がなくなると脂質がまずはじめに代謝されますが、脂質というのは炭素を丹念につなげる反応によって成り立っています。
逆にこれらが分解されエネルギーとなるとき、しつこいくらいの代謝過程を経て使われることになります。
この反応は主にミトコンドリア上で行われ、時間と手間がかかります。
それはイコールミトコンドリアという器官の疲弊にもつながります。

発電所であるミトコンドリアの使いすぎが将来的に問題を生じさせないという保証は今のところ確認されておらず、それどころかリサーチの結果を見るにリスクが高い可能性は否定できません。

また反応がややこしくなればなるほどプロセスが多くなり、その一つ一つに酸化反応がつきまとうはずです。

その後始末を考えると必ずしも「安全」と断言できないと考えます。

マクロビオティックもそうですが、あえて穏やかな反応ではなく、病的な状況を意図的に作り上げ、それによる様々なベネフィットを選択する。
それ自体は(臨床的な経過を見れば)悪いことではないと思います。
そしてそれでしか回復できない状況というのもあるかもしれません。

ただ擁護派が腫脹するような、良いこと尽くめであるという話をそう簡単に信じるわけにも行きません。
それは対象物である人体が完全に解明されていない状態で構築された理論だからです。

隠された重大な問題が無いと、現時点で断言することは論理的に不可能です。

長期的には必ずしも安全な方法と言えない理由がこのあたりにもあるのかもしれないなと感じております。

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