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微小循環障害という概念

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微小循環障害という概念

今更の感もありますが、徒手矯正技術を考える上で重要な「微小循環障害」について改めて勉強してみました。

医学的な定義はそちらの専門家にお任せするとして、カイロプラクティックやオステオパシーの主張するそれはどのようなものなのか。

最近それを聞かれて(いつものことではずかしいのですが)完全に理解していないことに気がつきました。

話は少し手前から始まります。

私は以前から神経圧迫を矯正するとうたう技術体系が行う「説明」には不満を持っていました。

徒手矯正は効果があると思いつつも、その説明がはらんでいる矛盾がどうにも納得がいかなかったわけです。

それは単に私が未熟でアタマの弱い人間だというせいもありますが、どうにもその弱いアタマが納得しないうちは先へ進めない性分らしく、いつも悩んでいた記憶があります。

中枢神経内部接点の疑似病理などの説明もありましたが、ゆがんだ状態でも十分なスペースを確保しているはずの末梢部位の操作が、何故中枢への(常に好ましい)効果をもたらすと考えられるのか。

少し考えればおかしなところはいくつも出てくるわけですが、いずれにしても決定打と呼べるような説明は見当たりません。

表題にある「微小循環障害」もおそらくはその一つですが、比較的蓋然性が高いという点で私は個人的は注目しています。

生体が自身を維持するためのファクターとして

・ATP(アデノシン三リン酸)を作り、利用しうる環境
・好気性反応を仲立ちする酸素
・これらを循環させ、物質交換を行うためのシステム

が最低限健全である必要があります。

ATPは解糖系で2,クエン酸回路電子伝達系で36,合わせて38分子のATPがグルコースを元に作られます。

解糖系は嫌気性ですが、クエン酸回路電子伝達系は好気性といい、酸素という反応性の高い物質を使って大量のエネルギーを効率よく生み出します。

血管に代表される循環システムは、まず各組織に酸素をはじめとする栄養と呼ばれる物質を運び、各組織で利用された結果の老廃物などを運び去ります。

循環はもちろん血管系だけで完結するわけではなく、ほぼ同じ経路を巡っているリンパや、中枢神経系を保護栄養している脳脊髄液などもその要素であると考えます。

さて先の神経圧迫説を考えてみます。

これはこのサイトでも何度か疑問視してきましたが、循環障害を絡めてみると、案外うまく説明がつくような気がします。

解剖学的には脊髄周辺にも無数の動静脈が走行しています。

大動脈から分岐した分節動脈と合流しつつ、末梢神経を栄養するための血管を分岐させています。

生体組織のすべてがエネルギーを必要としていますが、神経系の要求量はその体積からするとかなり大きなもので、わずかな酸素分圧あるいは糖運搬量の低下が著しい機能低下を招くことがあります。

ここでは話がややこしくなるので神経周辺だけに限って考えてみます。

仮に末梢を栄養している毛細血管の一部が、ストレス処理の遅れから一部狭窄に見舞われたとします。

血管も筋肉であり、かつ交感神経だけの支配を受けていますので、ストレスによる交感神経系の機能亢進は、少なからず血管の緊張を招きます。

毛細血管は血球成分がかろうじて通れるほどの太さですで、それが狭窄したまま戻らないと、その部分の栄養はかなり厳しいことになります。

特に備蓄がきかない酸素への要求はすぐに厳しいものとなります。

この酸欠状態は本来ならば酸素の使用量を低下させる副交感神経優位状態を招き、即座に血管経の拡大を誘導しますが、

・外傷による血管の損傷による血流問題
・周辺筋膜の機械的な制限

などが存在すると、血管経を拡げることが難しくなります。

その結果、血流の増加によって対処しようとし、交感神経優位の状態が維持されることになります。

この交感神経優位は最初は局所的なものですが、体性神経と密接にリンクしている交感神経細胞は当該部位のフィードバックにより、制限領域の血流を増やそうと興奮し続けるものと推測されます。

この興奮持続状態はまたその部位のリラクゼイションを妨げ、ますます血流量が低下する状態を招きます。

これは交感神経異栄養状態と呼ばれる、痛みや機能低下が起きやすい問題として分類されます。

経の小さい、つまり末端にゆくほどに血管はこの影響を受けやすくなり、特に神経系におけるそれは想像以上にまずい状況を作り出していると考えるべきでしょう。

また末端周辺の循環障害は、当然のことながらその元になっている大きな血管をも巻き込んでゆきます。

先の流れがおかしければ、元に方では圧力が高まるか、スターリングの法則によって還流量の低下=拍出量の低下がみられるようになります。

短期間ではあれば問題は少ないかもしれませんが、長期にわたったり、特定のシチュエーションに惹起され頻出するようだと酸欠に弱い中枢神経系はまたまたおかしな状況に追い込まれやすくなります。

新潟大学の安保教授の論によれば、交感神経系の機能亢進は免疫システムにおいて貪食細胞の増加を促し、ウィルスや体内における不都合な生成物を排除するリンパ球の生成を抑制するとなっています。

またこれら白血球の組成比率は、自律神経系のバランスに関与し、最適ポイントへの復元作用に干渉するともあります。

一度確立されたこのような(最適範囲からの逸脱という意味で)エラーループは、やや強引な手法によって生じる衝撃が復元へのトリガーとなることがままあります。

徒手矯正は当該部位にある微小循環障害に対してある種の負荷として作用し、厳密にはその部位の混沌度を一気に上昇させます。

経験によって適切なレベルに設定された刺激を加えうる手技を行うと、今まで復元させようにもさせられなかった微小循環障害は、最も素早い制御反応である自律神経系を中心により効率的な状態を復活させようとします。

細胞のセミモノコック構造はそのフレームの最も安定したテンションを目指し、これに支持された組織は修復のためのプロセスを開始します。

血管もその例外ではなく、すでに完成された架橋状態は解除できなくても、弾性組織の固着はその程度に応じて回復し始めるでしょう。

血管の柔軟性が増してくれば、より多くの血流を受け入れることができ、酸欠による交感神経の過剰な介入は必要なくなり、副交感神経系優位の状態へとスイッチし始めます。

このことは微小循環障害と呼ばれる機能問題解決を加速し、よりなめらかな構造/機能状態を実現しうると思われます。

結果として神経系への不要なインパルスは消失し、最も妥当なレベルの機能状態へと回帰する。

徒手矯正における微小循環障害の意味はそんなところにあるのではないかと推測します。

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