嗅覚について
嗅覚について
「鼻について」を書こうと思ったのですが“あまり書くことがない・・・”と言うことに気づいたので“嗅覚”になりました。
嗅神経という、12対ある脳神経の一番目がその機能と関係しています。
これも視神経と同じく、シナプスを換えない神経で、ダイレクトに感覚が伝えられます。
前頭骨のした、鼻の上に篩骨というごろんとしてしかし隙間だらけの骨があります。
この垂直板の一部が前頭骨に食い込んでいて、これを篩骨篩板と言います。
ここに小さな孔があいていて、鼻粘膜から起始した神経がここを通って嗅球という脳の一部とリンクしています。
ニオイ刺激は化学的刺激で、これをキャッチした感覚器が興奮し、インパルスを伝えます。
セラピストとして気になる最近の傾向は、このニオイにきわめて敏感な人、特にストレス記憶と結びついたパターンが増えつつあることです。
生理的に苦手なニオイというのは、誰しも一つや二つは持っていると思います。
わたしも硫黄のニオイをかぐと「ひぃ!」となります。
マッチや花火などはもってのほかで、昔は母親がパーマ(最近のはあまり匂いませんね)をかけただけで逃げ回っていました。
しかし、生理的なシステムに明らかな影響を及ぼすレベルの反応というものもあり、場合によってはアナフィラキシーショックにまで移行することがあるとか。
他の脳神経もそうですが、嗅神経は特に辺縁系や網様体と密にリンクしています(と手元のテキストに書いてあります)。
記憶、情動、自律神経反射をはじめとする全身反応とのネットワークなどとの連動性が強いとするなら、ニオイは私たちの行動を大きく左右すると言ってよいかも知れません。
構造的には前頭骨、鼻骨、蝶形骨に対する外傷や可動制限がこの感覚を阻害しうるファクターとなり得ます。
また子供によくあるのは上あごを打ち付けたとき、鋤骨という骨を介して篩骨篩板に影響が出ます。
これが未完成な嗅覚に強い影響を及ぼすことがあるのを複数のケースで経験しました。
またビタミンAの吸収障害によって粘膜分泌が阻害され、その結果鼻が常に乾きすぎてニオイをキャッチできなくなるというパターンも結構あるようです。
ニオイは顔面神経や舌咽神経と言った味覚系の中枢と相互接合があり、嗅覚の低下が味覚の鈍麻をきっかけに発見されることも珍しくありません。
視覚以外の感覚が他の動物より鈍いと言われている私たち人間ですが、なかなかどうして嗅覚の影響も小さくないようです。