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脳は普段10%しか使われていない?

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脳は普段10%しか使われていない?

表題のフレーズはおよそ100年くらい前から言われてきたことらしいのですが、決定打になったのはデール・カーネギーの著書だと言われています。
彼は一流の実業家で作家でもあったわけですが、一流のアジテーターでもあったと考えられています。
アジテーションが得意だから実業も成功したのか、実業の方で成功したからアジテーションが上手になったのかまではわかりませんが、少なくとも彼の時代に「脳は1割・・・」という話を科学的に証明したペーパーは存在しておらず、どこかの誰かが言った言説を短い言葉で印象づけるように誘導したようです。
なので一流のコピーライターと言うべきなのかも知れません。

さて、実際脳という臓器はそんなに「余剰」を抱えているのでしょうか。
現在の科学的な知見を元にすれば「ナンセンス」あるいは「都市伝説」であると言えそうです。

脳はたいていの場合、たくさんの仕事を同時並行して処理しています(マルチタスク処理)。
歩きながら音楽を聴いたり、計算を行いながら記帳したり出来るのも、基本的には同時並行処理が可能だからです。
慣れた動作ほど脳は内部リソースを使わない。
そしてそれは大脳基底核をはじめとした「行動をパッケージ化するシステム」が正常に働くことによって可能になる。
以前そのようなことを書いたことがあります。
このような「無意識でも出来るくらいになじませた動作」だけをみれば、確かに脳全体ではその稼働割合は1割以下ともしかすると言えるかも知れません(詳しくはわかりませんが)。
しかし、普通私たちは純粋にシングルタスクのみを処理実行していることはまずありません。
ものを考えていても周囲に違和感を感じれば注意はそちらに向きますし、歩いていたって歩行だけにすべてを集中させている方が珍しいと言えるでしょう。
まれに「一つのことだけに集中してしまう」場合があったり、そういう傾向を強く持つ人はいますが、生命維持に必要な反応までをシャットダウンしてしまう人の方が少ないことだけは間違いありません。

また入力されたデータによって出来た混沌の中から必要な情報を生成し、それを既にある記憶のサーキットに関連付けバックグラウンドで走らせる作業は、基本休みなく行われています。
言い換えるならば「使っていないようで常にあれこれ稼働させている」のが私たちの脳であると言えます。

潜在的な能力はたくさんあり、普段は眠っている。
ある種の人たちが好きなフレーズですが、これだけみるならば特段間違っているとは言えません。
確かに意識できる、あるいはアウトプット可能なスキルやポテンシャルというのはそうそう多いわけではなく、“10%しか使っていない”というのも、ある意味うなずけないわけではないからです。

しかし機能局在性が徐々に解明され、これに沿って脳をマッピングしてゆくと、不必要あるいは普段使わずに済んでいる領域が9割もあるとはとても言えなくなってきました。
今この瞬間に使われているサーキット及びエリアは少なくとも、次に瞬間には必要な発火があるかも知れず、“最後の切り札”みたいに出番を待っている潜在領域となると話は違ってくるのです。

仮にある行動や思考にすべてのリソースが集中したとすると(ありえませんが)、その行動や思考については「いつもより何倍も力が発揮できた」と言えるかも知れません。
それによって脳内にその行動思考に対するより効果的なサーキットが構築される可能性だってあります。
ただ、これをもって「潜在能力が発揮された、残りの90%を使った」というのはどうでしょう。
言うのであれば「今まで使わない使い方をした結果、新たなやり方を身につけた」という方が妥当であるような気がします。

右脳左脳の話もそうでしたが、とかく私たちの脳という臓器はまだまだなぞが多く、それ故私たちの理解も誤解というものがついて回る段階にあります。
治良においても鍵を握る臓器ではあるものの、安易な理解解釈は慎むべきだと自分自身を改めて戒めずにはいられません。

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