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好転反応

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好転反応

私たちパラメディカルの世界でよく使われる言葉ですが、改めて問われると答えに窮することもあります。
正しくはどのような現象を指すのでしょうか。

まず「安定」と言うことを考えてみます。
ある状態に対してからだが適応して、状態なりにエネルギーの変動が最小限になっている。
言い方を換えると「ともあれ落ち着いている」状態をもって”安定している”と定義することが出来ます。

ただし当然ながら”好ましい安定”であるかどうかはわかりません。
体温40度で安定している、と言うことだってあるわけですから。
しかしながら生き物は概して出来るだけ効率よく、損耗が少ない形で安定していたいというのが本来のはずです。

少し角度を変えてみると、私たちは常に内外の変動に対して適応しつつ、自身の「変動率」を最も少なくしうる状態に置こうとする。
人体における安定を私はそのようにとらえています。

一方、私たち徒手矯正を行うものの大切な仕事の一つに「安定を壊す」というものがあります。
書き間違いではありません。
生体というのは上に書いたようにどう見ても病的な安定を選択してしまう場合もあります
そんなとき無理して効率を回復させて損耗するよりも多少おかしくても良いから変動しない方を好むのが私たちの特性のひとつでもあるわけです。
そんな(ある意味)体の事なかれ主義が続いた場合、私たちは過剰適応という状態に陥り、自力で復元するきっかけを失うこともしばしばです。
こういった”かりそめの安定”をそのつっかい棒たる反応(たとえばむち打ちなどによる頚椎ねんざの場合、その周辺筋/筋膜の緊張で内部の不安定さをカバーしようとする)を、適切な方法によって解除したとき、一時的にですが安定性が損なわれます。
その後、しかるべき修復が必要な箇所に起き、本来的な「治癒過程」が始まります。

徒手矯正は基本的にこのような「回復に必要な生体負荷」を人為的に作り出し、より効率的な安定状態を作り出すことを本来の目的のひとつとしています。

しかしながらこのような「負荷を克服するための反発を利用する」方法論は、当然それなりの代償を体に要求します。
先ほどのむち打ちを例に考えてみます。

むち打ちとは予期せぬ外力によって頭部が揺らされ、結果的に頚椎あるいは後頭環椎顆にねんざなどの損傷を負うことを言います。
交通事故、特に追突事故によって引き起こされやすく、不適切な処置によって長引き、確認できないポテンシャル残存によって深刻な後遺症に悩まされやすい問題のひとつです。
ただしいわゆる頚髄損傷等の回復が難しい状況はここから除外します。

安定、つまりエネルギー変動を出来るだけ少なくするよう反応を方向付けられるよう設えられているのが私たちの体です。
この基本原則に沿ってみてみると、むち打ちで損傷を受けた脊椎関節周辺の組織、靱帯や筋肉椎間板など、は当該組織が十分に機能できなくなるとその補佐組織がこれを代行しはじめます。
ただし主動組織ではないため、同じような安定度に近づけるためにはやや無理をせねばなりません。
つまり「硬く」なることで安定度を上げようとします。
この硬くなった組織は可動性も落ちていますので”本来とは違う動き”を作り出します。
この結果、制御系血管系をはじめとする様々なシステムはその効率が落ち、しかし確認しづらいほど微少なため、理解や正しい処置が得られず様々な不定愁訴に悩まされることになります。

徒手矯正のテキストのいくつかには、このような硬い動きに対してカウンター的な方向から修正を加え、ディスロケーション(位置異常)を戻すことで神経系が安定し治癒機転が働くようになる、としています。
その説明はともかく、実際にやってみるならば(そしてリスクを伴うことを厭わなければ)ある程度の効果が認められます。
今回の表題が「好転反応」なので、あえて単純化して考えてみます。

このとき起きている生体反応は

・急速/緩速に関わらず、スラスト等で伸ばされた「代行組織による反応」が解除され、それ故に不安定さがまし、これを安定させるため本来の主動組織に対して復元反応が促進される

コトが推測されます。

最初からそれをしていれば面倒いらずなのに、あえて低いレベルでの安定を選択した体からすれば、この”改革”によって起きる変動は現場レベルでは言うに及ばず、制御系レベルでも見ても大きな変動を余儀なくされるはずです。
それはイコールATP(アデノシン三リン酸)を今まで以上に使うことを意味し、経絡で見てもいくつかの経絡に精が振り分けられる反面、別のいくつの経絡は必要レベル以下の精しか流れ込んできません。
国家で言えば、資金や人間と言った限られたリソースを改革によって生じた現場に振るため、今まで出来たものを少ない人数で回さざるを得なくなった結果、忙しい役所が増えるようなものでしょうか。

で、こういった「ルーティンと違うエネルギーの使われ方をした直後」というのは、有り体に言えば結構な疲労感があります。
昔であれば交感神経優位状態が多く、施術の結果副交感神経優位へスイッチした結果、眠気やだるさをおぼえる人が圧倒的に多かったわけです。
しかし現在の日本で施術を受ける人たちの多くは、副交感神経優位状態にあり、直後はだるさや眠気がなくなるものの、その後慣れない交感神経系の興奮を持続させられて反応が揺動する傾向が見られるようになりました。

いずれにしてもより効率的な状態への遷移課程では、一過性の不安定さと何らかのエネルギー不足を経験することがほとんどです。
そしてその期間ですが経験的なことから言うと長くて一週間、短くても48時間程度はあるとみて良いかと考えます。
もちろん感じる違和感の程度も人それぞれなので、気がつかないまま経過し安定してしまうケースも少なからずあります。

根治治療であり不快感がないと喧伝されることもしばしばな私たちのアプローチですが、生体に負荷をかけて復元を期待する以上、皆無と言うことはあり得ません。
治癒のための一過程。
好転反応とはそのようなものであると私は理解しています。

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