Case-7
Case-7
女性 30代
異常な浮腫みを訴え受診。
すねを押してみても骨に届くか届かないか、というレベル。
数年前から発症。
総合病院を受診、加療するも、検査結果が不安定なまま現在に至る。
肝機能の問題と思われる脂質代謝異常、及び血清蛋白の異常値。
またこの影響なのか尿蛋白が高いレベルで頻繁に検出される。
白血球数が概ね高く、炎症反応こそないものの内部に熱がある可能性も伺わせた。
ただし腎機能を示すクレアチニンは概ね低くかつ安定的。
尿素窒素も時々高くなるがそれほどむちゃくちゃな数字にはならない。
eGFRも正常値。
尿酸値も正常。
因みにステロイドを始めとする抗炎症剤やスタチン剤、免疫抑制剤を多用。
専門家ではないのではっきりはしなかったが、アルブミンの低値を見ると血漿成分が漏れ出して浮腫んでいるのかも、と考えた。
システム全体のチェックをしてみる。
正常であれば感じるはずの「うねり」がほとんど触知されず、しかし内部ではその動きを起こす力そのものの存在はあるように思われた。
各部の連携性はかろうじてある。
ただそれが全体として極めて散発的にしかつながりを持たないため、全身を安定的に動かすためのうねりが生じづらいと考えられた。
呼吸をチェック。
吸気も呼気も十分に行われておらず、まずここから手をつけることにした。
どちらかと言うと呼気、つまり肺や胸郭が元に戻ろうとする力による動きの方に問題がありそうだったので、おもいっきり吐き出させてその間にチェック。
左交感神経節、その胸部セグメントに強い反応がある。
詳細に調べてみるとその部分周囲筋の強い緊張と、血行不良と思しき触診温の低下が感じられた。
また刺激(叩打)をしてみると明らかに(筋力検査でわかる)拒否反応がある。
このエリアの組織全般は、長期に渡る負荷対応のために疲弊状態にあると思われた。
頭部にコンタクトして呼吸による動きを補正。
あるポイントを境に安定的な動きになり、胸部セグメントも反応消失。
1回目はこれで終了。
このようなケースにおいてこの部分をターゲットとして治良を行なっても、”必要な緊張状態”はいつでも復活しうるし、最悪の場合、余裕のないシステムが更に機能的レベルを低下させることも考えられた。
つまり強い刺激や直接的なアジャストメントは極めてリスクが高いことを示している。
慎重な検査と治良が要求されると判断する。
2回目はメジャーがはっきりせず、施術者の身体の反応に任せてみる。
案の定、呼吸に関連する反応を修正しようとする動きを検出。
これ以降浮腫は漸減。
検査結果も波はあるが徐々に理想的な範囲に収まるようになり、現在は概ね良好な結果が得られているようである。
もちろん浮腫みは全くといっていいほどなく、体調も良好であるとは本人談。
考察
治良に関して特にスペシフィックなことをしたわけではない。
いつものようにシステム全体の調和を取るようにセットアップを進めていった。
仮説だが、最初の胸部交感神経セグメントの反応に鍵があるとしてこの症例を考えてみる。
胸部交感神経節は、当然のように自律神経系全体とリンクしていると考えるべきで、部分的な考察はあまり意味が無いかもしれないが、あえて推測をしてみる。
脊柱に平行して走っている交感神経節は、脊髄神経枝に対して、特にエネルギー消費に関するアクセラレーション指示あるいはそれに類するリアクションを働きかけていると考えられる。
臓器はその活性度Upのトリガーが交感神経系は副交感神系かの違いこそあれ、支配神経がシナプスを作っている以上無関係ではいられない。
つまりここに構造もしくは機能的に負荷がかかり続けてくると、シナプス形成をしている神経は支配下臓器に対して正確な制御が難しくなる。
短期間ならそれもよいが、長期に渡ると相当な問題が生じることは想像に難くない。
今回は構造、機能のどちらが先立ったのかは判然としないが、クライアントに起きた結果を見るかぎり、小さな歪みもゆめゆめおろそかにはできないことを再認識した。