越田治良院へようこそ あなたのココロとカラダをリセット

Case-9

FrontPage

Case-9

Case9

自律神経反射問題ですが、自戒も込めてやや複雑な経緯を持つものとして書いてみます。

男性 
主訴:昼食後のめまいを伴う意識不鮮明状態。

脳のスキャニング、血液検査を含む検査では問題は発見されず。
血糖値も正常で、少なくとも極端な反応は見られなかったとのこと。

食後毎回ではないが本ケース特有の症状として

・食後運転中に意識が遠のくような感じがある
・食後一時間ほどして起きることが多い
・ほとんどが昼食後
・缶コーヒーを飲むとてきめん悪化する
・朝食や夕食後の異常はあまり見られない
・安定剤を処方されていて、飲むと少し楽になる
・以前マッサージを受けていたときにとても楽になった経験がある

以前から来院されていましたが、今回初めて以下のような問題が検出されていました(自分の検査技術の未熟さを恥じています)。
1回目の検査結果です。

・左側頭部/後頭部の可動制限
・特に小脳天幕錐体部の制限が著しい
・大後頭直筋/小後頭直筋の緊張
・後頭環椎顆アライメント問題
・左軟口蓋下垂気味

以前経験した症例の中に副交感神経問題による似たような症状(食後気が遠くなる)があったことを思い出す。
側頭部と後頭部で作るいくつかの骨性の孔の中に、頸静脈を通している孔があります。
この孔から舌咽神経、迷走神経、副神経という脳神経も一緒に頭蓋外へでてゆきます。
孔付近で内頚静脈の膨満部と密着するように出て行きますが、

・頚静脈孔を形成する側頭/後頭部の可動制限
・もしくは頭蓋硬膜の制限

があると、食後副交感神経優位になったときに内頚静脈に逆圧が生じる可能性があります。
これは血流量の増加とともに起きる自然現象ですが、この逆圧は膨満部を押しひろげ、併走している迷走神経周膜の循環に影響します。
正常あるいは一時的な問題であればどうと言うことはありませんが、長期にわたるあるいは重篤な制限下にあるときは、迷走神経の反応に干渉すると思われます。
結果として血圧が下がり症状を作っていると判断して治良しました(この考えが浅すぎたことは後に判明します)。

さて数日後、2度目の治良のため来院されたときに経過をうかがうと

・数日はよかったが、三日ほどすると元に戻った

とのこと。

さらに詳しく聞いてみると、発症時に血圧測定すると下がるどころかいつになく上昇するらしいのです。
また胆石を大きくしないための薬を処方され飲んでいるということもわかりました。

ある種の脳貧血であることは間違いがなさそうなのに、食後血圧上昇を伴う「意識が遠のく」問題とはどのようなものなのか、はたと考え込んでしまいました。

2回目の検査結果は以下の通り。

・側頭/後頭部の可動制限はほとんど消失
・頚部筋肉の問題も改善傾向
・左軟口蓋下垂も改善
・新たに胆嚢の動き(食後胆汁を分泌するための動き)に問題があることが判明

まず血圧上昇ですが、いくつか要素が考えられますが、ここでは食後副交感神経系の問題があることに関連していると前提して考えてみました。
血管の収縮を司っているのは交感神経ですが、弛緩は副交感神経では無く、交感神経からの刺激がおさまることで成立します。
つまり自律神経の側からみると、血圧上昇は交感神経機能亢進がその背景となります。
一方副交感神経機能と絡めて考えると、交感神経の機能亢進は副交感神経の機能低下がそのほとんどの背景状況となります。

食事>副交感神経優位>血管拡張>迷走神経刺激>機能ダウン>反射的に交感神経緊張>血管収縮

がおき、これに加え頚部筋肉、筋膜の緊張が血行制限に拍車をかけることで起きる脳貧血状態があるのではないか、と考えました。
また胆嚢の問題があるようで、慢性的な迷走神経肝枝刺激による負荷が生じていた可能性があることも付け加えておきます(これが缶コーヒーの過剰な反応をもたらしていた可能性があります)。

食後低血糖の可能性も考えましたが、これについては検査の方法が無く、メディカルチェックでも問題を指摘されていない以上「そうかも知れない」にとどめておくしかありませんでした。

胆嚢周りとその制御反応の最適化を介しての治良となりました。

3回目は一週間後。

このときは大分改善していて、完全ではないもののかなり安定した様子でした。
頚部筋肉/筋膜の問題の残りが出てきたため修正して終了。

考察

迷走神経症状と舌咽神経症状が混在していた時点で頚静脈孔問題であることは予想がついた。
が、そこから先の「交感神経機能亢進」には考えが至らず、症状の詳細を聞き漏らしたことと併せて十分なケアをすることができなかった。

知識が少ないの今に始まったことではないが、物事を単純に考えすぎようとして長引いてしまったケース。
思考経路に再考を要することを思い知らされた。

powered by Quick Homepage Maker 5.3
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL.

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional