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眼球運動

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眼球運動

知らないことばかりで恥ずかしいよりも自分自身にあきれる気持ちが先行している私ですが、ふと「目が横を向くときってどうなっているんだろう?」と今更ながらに疑問に思いました(遅いですが)。

調べて書けば勉強になる。
と言うわけで眼球運動についての疑問を解決すべく調べてみました。

まず眼球の運動がどのような筋肉によって行われているのか。
まず眼球を正面から見てみると、上下左右に一本ずつ筋肉(上直筋、下直筋、外側直筋、内側直筋)があります。
それぞれ上、下、外側、内側に眼球を向ける働きがあります。
このほかに上斜筋、下斜筋と言う筋肉があり、(名前と違い)それぞれ斜め外側下、斜め外側上を向けさせるように作用します。

次に神経支配ですが、
上直筋、下直筋、内側直筋、下斜筋は動眼神経(脳神経Ⅲ)、外側直筋は外転神経(脳神経Ⅴ、上斜筋は滑車神経(脳神経Ⅳ)によって動かされています。

さてココで疑問の詳細ですが、たとえば眼球だけが左を向くとき通常両側とも左を向きます。
片方だけが外を向く、あるいは両方とも外を向くと言うことが出来る人はあまり見かけません。
ということは左眼は外転神経による外側直筋の作用によるものであることはわかりますが、右眼が左を向くのは動眼神経が内側直筋を動かしているから、のはずです。
一体どのように制御しているのか。

「眼球だけを左に向けろ」
まずこの命令は(意識的であれば)右大脳前頭前野という部位から発せられます。
これが大脳基底核、中脳上丘を通り、対側の左傍正中橋網様体という神経核に届きます。
動眼神経は同側性支配なので、これが左外転神経を興奮させます。
これにより左外側直筋が収縮し、左眼球は左側を注視します。
この外転神経核に届いた命令は、同時に対側の動眼神経核に「内側直筋を動かして」という命令を送りますが、このとき内側縦束という神経核によってシナプスされます。
この神経核間をつなぐニューロンを「核間ニューロン」とよびます。
この内側縦束が腫瘍や脳梗塞によって障害されると、外側直筋は機能しても対側の内側直筋は同調できなくなり、極端なやぶにらみ状態になりますが、これをMLF(medial longitudinal fasciculus)症候群といいます。
また、左眼球左注視命令は左内側直筋に対して「緊張しないでおとなしくしていてね」と命令を送りますが、これを相反神経支配と言います。

外側直筋の機能問題というのは臨床上意外と多く、上記のどこかに機能制限があると外側を向かせたときに極端な反応が観察されることになります。
以前あった症例の中に、慢性的な頭痛を訴えるケースがありました。
メディカルチェックではどの診療科も問題はないと言われ、しかし鎮痛剤をはじめとした様々な薬、向精神薬を含む、が全く効かない状態の方がおられました。
検査をしてみると右対光反射が低下し、右側を注視させるとその傾向が強くなりました。
片側の対光反射低下は通常視神経の問題で、両側性である動眼神経EW核の問題ではありません。
前頭前野から動眼神経への経路のうち、中脳上丘と言う神経核があります。
ここの一部は動眼神経や視神経をはじめとした視覚に関わる入力情報を中継しますが、ここに視神経及び動眼神経の光入力に関する情報が送られる、ようなのです。
ここには例えば右眼球視索から送られてくる情報が、連動している視蓋前野で処理されている左視索の反応と統合されて、適切な眼球運動や瞳孔反射として機能します。
またこの上丘は、様々な体性感覚の入力先でもあり、傾斜や回転運動に対する眼球の補正を行う部位でもあります。
これは推測ですが、このケースにおいては眼球運動に対する身体反射の齟齬、逆に身体の動きに対して眼球運動の整合性がとれておらず、これが脳のノイズとなって痛みを発生させていたと、経験上考えるに至りました。
眼球を外転させてみて、その結果生じる負荷及び緊張を通常通りの手法で緩和させると、翌日には痛みが取れ、2回ほどで問題のないレベルに回復しました。

眼を動かすという出来て当たり前と考える動作にも、私たちのカラダの精妙さが詰まっている。
それを改めて感じます。

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