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尻もち

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尻もち

北海道全体がそうなのかはわかりませんが、函館の2月末から3月にかけての路面状況は極めて劣悪なものになります。

正確には「歩行者にとってよりきつい」ですが、厚く積もって踏み固められた雪が日中の気温上昇で溶け、朝晩の気温低下によって凍るようになり、これをしばらく繰り返します。

そうやって出来上がった路面状況ははっきり言ってスケートリンク状態で、よほど注意して歩かないと漫画のように転んでしまうことがあります。

さてこの「転倒」ですが、一番まずいのはもちろん仰向け>後頭部強打です。

場合によってはすぐに脳神経外科を受診する必要があります。

年齢などによっては脊椎の圧迫骨折や股関節頚部骨折などの重症例もありますので、いずれにしてもおかしいと感じたら医師に相談することを忘れるべきではありません。

では私の治良がこの問題にどのように関わってくるのか。

転倒後受診されたケースで最も多い訴えは「頭がぼーっとする」というものでした。

まれに頚椎にも圧迫骨折が発生しますが、この問題あるいはこれに類するほどの負荷がかかっていないこととします。

もちろんこの稿ではそのほかにクリティカルな問題がないことが前提ですが、こういった症状が頻発する背景とはどのようなものなのでしょうか。

解剖学的に考えると骨盤というユニットを強打した時に起きる障害は上記にあるものを除くと

・尾骨骨折

・筋の断裂

など、いわゆる外傷性の問題が殆どと言ってもよいでしょう。

しかし頚椎を始め、上半身に画像診断などで分かる範囲の問題がないのに、症状が頭部にあるのはどう考えるべきか。

可能性の一つとして、自律神経経由で起きる血管運動障害が思い当たります。

骨盤はその後方中心に仙骨という逆三角形の骨を挟んでいます。

この仙骨内部には仙骨神経叢という神経の束が通っています。

第2~4の仙髄に神経細胞があり、骨盤内臓器を支配しています。

同時に副交感神経線維を含み、大腸、膀胱、生殖器の働きに関与し、胸腰交感神経節に影響を受けます。

消化管を支配する繊維は腸壁神経叢というある種のローカルネットワークを形成しており、中枢神経系からの入力がなくても腸の動きを維持することができます。

また、交感神経系からのシナプスも多数受け入れ、結果仙骨神経叢は半独立した自律神経反射を持つエリアを形作るパーツとしての側面も持ちます。

さて、この仙骨あるいは尾骨を強打しとき、その衝撃はどのような問題を引き起こしうるのでしょうか。

尾骨は仙骨の下につく小さな骨ですが、その骨膜は仙骨4番からはい出てくる脊髄硬膜の付着部ともなっています。

またその上の仙骨は解剖学的には一枚の骨ですが、実際の感触はかなり柔軟性のあるユニットで、僅かな圧力によって動きが方向付けられる性質を持っています。

これらが下から瞬間的な強い圧力をかけられた時、骨自身の圧縮のような反応が起きます。

これは恒常的な可動制限であり、骨内部の正常時にある僅かなうねりをストップさせます。

脊髄硬膜は自転車のチューブのように脊椎内ではほぼフリーになっており、付着は上は頭蓋の内膜として、下は尾骨がその終点となっています。

その一方が強い制限を受ける結果となった時、頭蓋硬膜もまた縦方向へ慢性的な可動制限を受けることになります。

縦方向に長い脊髄硬膜ですから、上に行くほどその影響は漸減してゆく可能性は高いです。

ただしすぐそばにある仙骨神経叢はどうでしょうか。

神経叢の内部構造は腰椎レベルから馬尾と呼ばれるバラけた神経となっており、内部においての物理的負荷を想定するのは少し無理がありそうです。

ただし孔から外へ出てゆく時点でのセグメントに関しては少し違うかもしれません。

硬膜の一部は神経周膜と交じり合う形で神経袖となって神経を包んでいます。

この神経袖に分布している(はずですが)反回髄膜神経は交感神経節とシナプスを作っていて、神経の栄養に関連した信号を作り出しています。

このエリアがすぐ下で引っ張られた時、間接的ですが血管運動を制御している交感神経節に影響を与えうると考えられます。

それだけではなく、副交感神経線維を含む仙骨神経叢も当然影響を受け、結果として腹部周辺の自律神経ネットワークに長期的な影響をあたえるのは十分有り得る話だと言えます。

結果、胸腰交感神経セグメントの上位制御系である脳幹網様体、間脳に恒常性にとって負荷となるインパルスの発生を促すことになります。

特に中枢神経系内において様々な部位とシナプスする脳幹網様体は心臓血管運動に強く関わりがあり、網様体脊髄路を介して視覚にも影響を及ぼします。

私はこの機能的な側面が尻もち>頭の違和感に関するメカニズムの一つではないかと考えてます。

この考察はやや強引な解釈、あるいは関連付けを含むことは事実ですが、臨床的な感触と照らし合わせるにそれほど無茶を書いているとも考えません。、

たかが尻もちと甘くみずに、おかしいと思ったらきちんと検査してみるのも大切かなと思います。

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