寄生虫
寄生虫について
今の若い方はご存じないかもしれませんが、私達が子供の頃は「検便」なるものを頻繁に行っておりました。
これは寄生虫の有無を判定するためのものでしたが、幸い陰性ばかりでした。
ワタシ自身がそれを目撃したことなどもなく、あまりぴんとこないものでしたが、私達よりも上の世代、親たちは農作物にそれら(寄生虫)がダイレクトでついていることも珍しくなかったと話しておりました。
昔は糞尿を発酵させて農作物の肥料としていたため、糞尿に混じっている寄生虫やその卵が農作物と一緒に取りこまれてしまい、寄生されることが結構あったそうです。
寄生虫の害については詳しいサイトなどもありますのでそちらを参考にしていただくとして、今日は日経サイエンスに載っていた興味深い記事の内容をご紹介いたします。
以前から「寄生虫は各種アレルギー疾患を治す」と主張している方もおられました。
私達のような「検便世代」からすると「ほんまかいな?」という感じですが、2011年4月号に興味深い記事が載っていました。
以下簡単ですが抜粋要約してみます。
潰瘍性大腸炎にかかっていると言っている男性が、寄生虫両方なるアプローチがあるという記事を読んで、鞭虫の卵を取り寄せ摂取を続けた結果、今や症状が事実上消えている、という。
その男性の要請により、寄生虫免疫学者ロークがそのメカニズムの解明を引き受けた。
その結果共同研究者とともに、鞭虫が大腸炎の治療に確かに有効だとする論文を発表した。
その骨子は
・寄生虫の定着部分では炎症と潰瘍が際立って少ない
・寄生虫が腸内で粘液の生産を刺激することによって治療効果を生じている可能性を示した
となっています。
少し前にムコ多糖体について書きましたが、粘液はこのムコ多糖体そのものと言うことができます。
炎症が起きるメカニズムの一つに、粘液の分泌が不十分で様々な理由で集まってくる血流による発熱を処理しきれない>>熱を持つ>>発痛物質やメディエーター(増強物質)が分泌され、そこに炎症物質が集まり慢性的な炎症が形成される、というケースがあります。
これを安定させるのもまた粘液の機能なのです。
粘液は分泌される場所によっても成分が異なりますが、おおむね当該粘膜と親和性の高い組成となっています。
ある場合は粘膜の脱落、新生を助け、また別の状態では粘膜の再生を行います。
またムコ多糖体のような糖タンパクは、粘膜に物質が組織に直接接することを防ぎ、完全ではないものの有害物質がそのまま取り込まれないような働きもします。
これらの働きをする粘液の分泌を刺激するのですから、炎症にも効果があるのはうなずけます。
また元々IgEなどの免疫グロブリンなどは、寄生虫に対抗するために持ち得た機能物質だという説もあります。
それ故にそれらがこの無寄生状態の現代人の人体内で暴走しがち(=アレルギー)であるというのも、何となく説得力を持つ話だと思います。
寄生虫も腸内細菌のように、ある種の共生生物であると考えるとき、必ずしも荒唐無稽な説明ばかりではなさそうだな、と感じています。
翻ってこの論に沿い治良においてアレルギーを考えると、その過剰な反応性に関心を寄せるべき、ということになります。
強い刺激はもちろん御法度ですが、制御システムの方向性こそが私のターゲットなのかなと考えます。
まだケーススタディが少ないのでなんとも言えませんが、この件に関して明言できるときが来たらご報告いたします。